(3/31)
更新を休止しました。

(10/14)
「二軍コピペ」に新カテゴリ
「もぅマヂ無理」を追加しました。
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(8/12)
本日は更新をお休みさせて頂きます。
ご了承下さい。

(7/1)
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「怖いコピペ」に新カテゴリ
「ロミオ・勘助」を追加しました。

(6/18)
副管理人・副々管理人のプロフィールを追加しました。

(5/25)
一部フォントを変更しました。

(5/6)
「ゴールデンウィークスペシャル」最後までお楽しみ頂けましたか?
次回の特別編成は夏頃を予定しております。ご期待下さい。
五月病は笑えるコピペを読んでサッパリ笑い飛ばしちゃいましょう!

(5/6)
ゴールデンウィークスペシャルもいよいよ今日がラスト!
最終日は管理人オススメ、2chの長編スレシリーズをたっぷりお楽しみ下さい!

(5/5)
ゴールデンウィークスペシャル三日目は特別編成恒例「洒落怖」!
各まとめサイトで殿堂入りを果たしたあの名作、この名作をお楽しみ下さい!

(5/4)
ゴールデンウィークスペシャル二日目は
真偽の程はともかく「ちょっぴりタメになるコピペ」をたっぷりご紹介致します!

(5/3)
今日から6日までの4日間は「ゴールデンウィークスペシャル」!
本日はネットで古くから愛されてきた名作コピペの祭典「古典祭 ~春の陣~」をお楽しみ下さい!

(4/22)
「あやぽんRSS」無事復旧のためヘッドラインを元に戻しました。

(3/4)
地味で暗い背景を何とかしようと模様替え()。ついでにテンプレも少々修復しました。
こういうリニューアルは4月頭にやるのがセオリーだと言うのに、一ヶ月も先走って改築してしまう洒落の利かない管理人なのであった。
ここはそういうクソのような人がやってるブログだと思って下さいませ。

(3/1)
RSS一覧を整理。

(2/24)
「二軍コピペ」に新カテゴリ
「くぅ~w」を追加。

(2/7)
メニューバーをリニューアルしました。
これでIEでの表示も問題なくなるかも…?

(2/2)
4ヶ月ぶりにトップ絵一新。
ブログ創立以来初のテキスト複合型トップ絵に無謀にも挑戦。
不具合等ありましたら至急連絡お願いします。

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    【長文注意】従姉に恋をした。【2】


    【1】はこちら

    643 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 00:51:56.27 ID:dw10+mQ9O
    一週間が過ぎた。
    大晦日。
    今日は俺の誕生日だ。

    俺の仕事は365日、平日と休日の別ない仕事だったが、
    転勤してまもないということで職場の先輩が気を遣ってくれ、この年末年始はまるまる休みとなっていた。
    しかしその休みも今は恨めしい。
    この間、俺は芽衣子さんに連絡をしなかった。彼女からも一切連絡はなかった。
    夜も昼も、芽衣子さんに言われたことをひとつひとつ考えてみた。
    彼女の言うとおり、恵子ちゃんへの想いが顔に出ていたのだろうか。
    感情が顔に現れやすい人間だと、自覚はしていた。
    怒れば口がとんがり、嬉しければ目尻が下がりっぱなしになる。
    しかしそれがこんな結果を招くとは。なんだかなぁ。このまま年越しかよぉ…。


    644 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 00:54:58.60 ID:dw10+mQ9O
    そうやって腐っていたら、午後、宅急便が届いた。
    芽衣子さんからだった。
    中にはマフラーと手紙が入っていた。
    一呼吸して手紙を開ける。

    「誕生日おめでとう。編み方を勉強する時間がなかったので、マフラーは買ってきたものです。
     でも一生懸命選びました。よかったら使ってね。
     大切な日なのに健吾君の横にいられなくて残念です。健吾君が私に側にいてほしいと言った言葉。
     うれしかったけど、私には無理です。
     健吾君が忘れようと努力すればするほど、きっと私の従姉さんへの嫉妬心は大きくなります。
     そして嫌な姿をいっぱい健吾君に見せてしまう。私はそれが怖いのです。
     勝手な言い分ですが、健吾君が従姉さんを忘れられる日まで、距離を置いて待っていてはダメですか?
     来年は手編みのものをプレゼントしたいです。  芽衣子」



    読み終えた俺の頭に疑問が湧いた。
    芽衣子さんがまだ俺を想ってくれているのはわかった。
    独占欲というコンプレックスがあって、嫌な姿を俺に見せたくないという気持ちも理解できる。
    過去に何かあったのかな。

    そんな姿は見たことなかったから相当抑えていたのだろう。
    気づいてやれなかった俺が鈍感だったんだ。
    でもね芽衣子さん。
    俺が恵子ちゃんのことを完全に忘れたと、誰が、どう判断するの?
    君の勘が鋭いことはよくわかった。

    俺が口先だけで「忘れた」と言ってもすぐに看破されるだろうことも。
    かと言って本当に忘れたとしても、そのことは君に伝わるのだろうか?
    君の勘は、それを受け入れてくれるのかい?
    2002年も笑顔で終われなかった。

    年が明けても、相変わらず俺は悶々としていた。
    (一生の間に、俺は何回「悶々」とするんだろう)
    笑いたくなった。
    どうしてよいものかわからなかったから、芽衣子さんへの連絡はずっと出来ないでいた。
    この頃の俺は仕事も忙しくて精神的にも参っていた。
    追い詰められた心と頭が、芽衣子さんへの不満を生み出す。
    忘れようが忘れまいが、今の俺たちには一緒にいることこそ必要なんじゃないの?
    芽衣子さんは考えすぎだ!
    …自分こそ、いつも理屈で恋愛を考えていたくせに。


    645 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 00:59:12.16 ID:dw10+mQ9O
    その頃、俺は会社の女の子とよく飲みに行っていた。
    そのコ・新藤 明日香さんは別の会社から俺の職場に出向していた人で、同じ部署の仕事仲間だった。
    仕事も優秀で、サバサバとした性格は付き合いやすく、
    また住まいも俺と同じ横浜だったので、よく帰りがけに一杯やった。
    男女ふたりが飲みに…とは言っても話す内容はいつも仕事のことばかりで色気のある会話は別段無かった。

    しかし回数を経るごとに彼女の態度が変わってきた。
    俺に気があるような態度、仕草が目立ってきた。
    俺も芽衣子さんと膠着状態にあったので、そんな彼女のアプローチを甘受した。
    だが決定的な言葉は言わせず、言わずのノラリクラリ。
    芽衣子さんの存在も新藤さんには言わなかった。いい気になっていた。
    今思い出すに、実にいやらしいヤツだったと思う。
    2月に入ってまもなく、仕事中、新藤さんが俺に小声で言った。
    「来週の金曜日、帰りに食事しません?」
    その日はバレンタイン・デー。
    「大塚さんに予定がなければですけど…」
    俺はOKした。


    646 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:00:20.96 ID:dw10+mQ9O
    バレンタイン・デー当日。
    会社から少し離れた喫茶店で待ち合わせした俺と新藤さんは、
    地元のほうが終電を気にしなくていいからと、横浜に移動した。
    「明日はふたりともお休みだから、朝まで飲みましょうね(笑)」
    丁度いいウサ晴らしになると、俺も「望むところさ~」と軽く返した。
    彼女のお気に入りだという店に案内された。

    店内はカップルだらけ。
    ここに来て突然、俺は自分に動揺した。
    なにしてんだ俺!?いや、なにしようとしてんだよ、俺!?
    乾杯の後、新藤さんがチョコの包みを出しながら言った。
    「付き合ってくれますか?」
    その言葉を遮るかのように俺は言った。慌てふためいていた。
    「ごめん新藤さん、ごめん!ここまで来ておいて、こんなこと言うのはおかしいし矛盾してるけど、
     ごめん、俺、付き合っている人、いるんです!ごめんなさい!」

    ワッ、と彼女が泣き出した。
    もう俺の視線は彼女に釘付けで、周囲の視線は感じたけれど、それを恥ずかしがる余裕など全く無かった。
    彼女は言葉もなく泣き続ける。
    自分のしたことに居た堪れなかった。
    ようやく彼女が泣き終えた顔を上げた。
    俺はひたすら謝った。
    ごめんと言うばかりで他の言葉は浮かばない。

    彼女が言った。
    「いいんです、いいんです…言ってくれてよかったです。ごめんなさい」
    謝るのは俺のほうです。 本当にごめんなさい!
    「大塚さんの言葉だけに泣いてしまったんじゃないんです…最近別れた彼氏のこと、思い出して…」
    彼女がその彼氏のことを話し始めた。俺は黙ってその話を聞いた。
    聞くことで俺のしたことが少しでも償えるなら…そんな身勝手な気持ちだった。
    その彼氏とは去年の11月に別れたという。
    理由は彼氏の浮気。というよりも、新藤さんと付き合い始めた当初から、同時進行で別の女性がいたらしい。
    結婚を誓い、双方の親にも挨拶を済ませた頃、それが発覚したそうだ。
    責める彼女に対して、彼氏は開き直るばかりか、暴力まで振るったという。
    踏ん切りをつけて彼氏と別れ、気持ちはボロボロになって何もかも嫌になった。
    もう会社も辞めてしまおうかと思った頃、俺が転勤してきた。
    いつも飄々としていて、明るく自分に接してくれる俺の姿に、彼女は救われたという。


    647 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:01:31.04 ID:dw10+mQ9O
    責められるどころか、そんな風に俺のことを話す彼女に、ますます申し訳なく思った。
    その後も彼女の話を聞き続けた。
    話しながら彼女は杯を重ね、店が閉店時間を迎える頃には、彼女はヘベレケになっていた。
    俺の酒量もとっくにリミットを越えていたが、とてもじゃないが酔えなかった。
    酔い潰れた彼女を引きずるようにして店を出、タクシーを拾う。
    彼女をタクシーに押し込み、自分は別のタクシーをと思ったが、
    いくらなんでもそれは酷いと思い直し、俺も一緒に乗り込んだ。
    正体をなくした彼女から住所を聞き出すのは骨が折れたが、
    それでもなんとか彼女のマンションまでたどり着くことが出来た。
    しかし揺さぶったりホッペを叩いても彼女は起きない。

    タクシーの運転手が苛立った声で言う。
    「一緒に降りてくれませんか?彼氏でしょう?」
    口論する気力も無かったので、彼女を抱えて降りた。
    酔っ払いは重い。

    俺は彼女を背負い、ひぃひぃ言いながらドアの前まで歩いた。
    と、彼女が目を開けた。
    「よかった。もう大丈夫だね?」
    「はい。すみませんでした」
    「じゃ、降ろすよ」
    だが彼女は降りようとしない。
    「どした?まだ立てないかい?」
    「大塚さん」
    「ん?」
    「今日は一緒にいて」
    耳元で囁かれたその言葉にクラクラとした。
    俺は泊まった。

    なんともバツの悪い朝を迎えた。
    のそのそとベッドから出た俺に新藤さんが日本茶を差し出した。
    「コーヒーよりこっちのほうが、大塚さん、いいでしょ?」
    笑顔だ。
    なんで笑顔になれるんだ?
    俺は苦笑いすら出来なかった。
    あまりまともに会話も出来ず、俺は帰ろうと身支度を整えた。
    「私も出掛けるので、駅まで一緒に行きましょう」
    早くひとりになりたかったが、俺は何も言えなかった。
    道すがら、彼女が言った。
    「何も考えないでください。私、これきりだと思ってますから」
    彼女はいつもの職場での顔になっていた。


    648 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:02:38.76 ID:dw10+mQ9O
    家に帰ると、郵便受けに宅急便の不在票が入っていた。
    芽衣子さんからだ。
    宅配会社に連絡すると、1時間後に荷物が再配達された。
    中には手作りと思しきチョコと、ブランド物のネクタイが入っていた。
    今回は手紙は無かった。
    それが何か無言の圧力に感じた。
    いろんな感情に塗れながら食べたチョコは、味がしなかった。
    翌週、職場で会った新藤さんはいたって普通だった。
    ありがたいというか、なんというか。自分が卑怯な男に思えたが、俺も努めて平静を装い、彼女に接した。
    以後、彼女は全くあの日のことに触れず、俺も口に出さず、ふたりで飲みに行くこともなくなった。

    一ヶ月後のホワイト・デー。
    芽衣子さんにお返しを送った。
    ちょっとだけ値の張る小物入れ。
    メッセージの類は入れなかった。
    何か事務的で、虚しさを感じた。

    それから一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月。季節は春を迎えた。
    相変わらず芽衣子さんとのやりとりはない。
    飽きもせず俺は考え続けていた。
    しかも今までは恵子ちゃんや芽衣子さんのことだけだったのに、なぜか新藤さんのことまで悩みの数に入れた。
    なんともはや俺という男は小心者で、ナルシストで、くだらない人間なのか。
    ある日、同僚と飲みに行った。
    いい加減酔い、終電に飛び乗った時、俺は衝動に駆られた。
    芽衣子さんに電話しよう。
    横浜駅はまだ先だったが俺は途中下車した。

    改札を出てすぐに電話する。
    2、3コールで芽衣子さんが出た。
    「お仕事ご苦労様!」
    芽衣子さんの言葉を聞いたらたまらなくなった。
    俺は芽衣子さんが口を挟む隙さえ与えぬほど、捲くし立てた。
    たのむよ!俺の側にいてくれよ!恵子ちゃんのことなんて関係ないだろ!
    忘れたかなんてわかんないよ!忘れたって言ったって信用してくれるのか!
    芽衣子さんが必要だってことだけわかってるんだ!
    嫉妬なんて構わないよ!嬉しいよ!嫌になんて絶対ならない!

    俺の話が終わるのを待って、芽衣子さんが言った。
    泣いてた。
    「健吾君の気持ちはうれしいの。でも私は、自分が嫌な女になるのが嫌なの!」
    初めて聞く彼女の泣き声に、俺は少し冷静さを取り戻した。
    「一体なんで、そこまでこだわるんだい?」
    俺の問いに泣きながら彼女は答えた。


    649 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:03:54.66 ID:dw10+mQ9O
    昔、結婚を考えた彼氏がいたこと。でも自分はいつも彼を疑ってしまったこと。
    そしてとうとう、彼は「わずらわしい」と言って去っていったこと。
    自分は病気だと、芽衣子さんは言った。
    俺は胸がいっぱいになった。
    「じゃあ、俺が本当に恵子ちゃんのことを忘れたと、芽衣子さんが確信を持てるまで芽衣子さんは待つの?
     そんなの芽衣子さん次第であって、いつになるかわからないじゃない!」
    ほんの少し無言になった後、芽衣子さんが言った。
    「それでも私は待ちたいの」

    ああ、理屈じゃないんだな、と思った。
    堂々巡りに疲れた。
    もう、いいや。
    俺は電話を切った。
    家までのタクシー代は2万円近かった。
    こんなことならカプセルホテルにでも泊まりゃよかった。
    自宅のベッドで横になりながら、そんなことを冷静に考える自分を冷たいと思った。


    夏。
    初めて体験する東京の暑さは俺を一層、滅入らせた。
    ある日、出勤すると新藤さんが職場のみんなに挨拶回りをしていた。
    俺の姿を見つけ、彼女が深々と頭を下げる。
    「このたび、会社を辞めることになりまして…」
    俺とのことが原因!?
    動揺した。
    「今晩、飲みに行きません?」
    小声で言った彼女は笑顔だった。

    その晩、飲み屋に入り席に着いた彼女が、開口一番言った。
    「私の退職は、大塚さんとのことと全く関係ありませんから」
    きっぱりとしていた。
    話を聞いた。
    彼女は彫金を趣味としていたのだが、
    最近、知り合いの彫金師にこれまで作ったアクセサリーを見せたところ、
    強くプロになることを薦められたそうだ。
    でもまだまだ自分は勉強不足だと感じるため、
    会社を辞め、その知り合いのもとで修行をしようと決めたらしい。

    生き生きと話す彼女がなんだか羨ましい。
    その時の俺はどういう精神構造をしていたのか。
    こともあろうに俺はとんでもないことを口にした。
    「俺と付き合ってください」

    はぁ?
    そうは彼女は言わなかったが、一瞬真顔になった後、すぐに笑顔でこう言った。
    「そんなこと言わないで。残酷だけど、私の中では終わったことなんです。それって『今更』、ですよ?」
    穴があったら入りたい、なんて言葉じゃ生温い。
    今思い出しても、恥ずかしさで腹の辺りに空洞を感じる。
    自業自得。
    また俺はひとりになった。


    650 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:38:11.58 ID:dw10+mQ9O
    プライベートがうまくいってないと、仕事までうまくいかないのだろうか。
    毎日なにかしらやらかし、何をしても空回りする日々がしばらく続いた。
    社会に出て10年余、どんなに辛いことがあっても仕事に影響するなんてことはなかった。
    それが、色恋沙汰で我を失っている。
    これじゃアカンがなと思う反面、案外俺も普通の人間だったんだなと実感した。

    秋になった。
    大きな失敗こそしなくなったが、相変わらず仕事はパッとしない。
    ある日、見かねた先輩が俺を飲みに誘った。
    「どうしたんだ、ここんとこ?何かあったか?」
    「いえ、別に。何もないですよ」
    「そうか?お前はそういうことあんまり話さないからなぁ。彼女と何かあったのか?」
    彼は俺が転勤する際、本社から残務整理の手伝いのために来ていた人だったので、
    俺と芽衣子さんが付き合っていることは知っていた。
    「彼女とは…終わったんですよ」
    「…そか。まぁ、どうせ話さんだろうから深くは聞かんけど」
    そう言って、先輩はそれ以上クドクド説教することはしなかった。
    飲んでいる間、先輩がさりげなく気を遣ってくれているのがよくわかった。
    ありがたかった。
    こんなところで駄目になっちゃだめだ。
    たった1年かそこらで都落ちなんてしてられっか!
    俺は少し前向きになれた。
    そろそろお開きにするかというところで先輩が言った。
    「パーッと合コンでもすっか?俺、セッティングしたる」
    それもいいか。
    「レベル高いの、たのんますよ!(笑)」
    カラ元気で言った。


    651 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:39:15.93 ID:dw10+mQ9O
    2週間後、六本木で合コンとなった。
    こちらは先輩と俺、相手はOLふたり。とても綺麗な人たちだった。
    丸の内で働いているというふたりはさすがに垢抜けていて、会話も洗練されている。
    話していて楽しかったが、当たり障りのない会話に虚しさも感じた。
    「ダメですよ!故郷のこと、そんな悪く言っちゃ!」
    OLのひとり、関口さんが真剣な顔で言った。
    会話の流れで俺の田舎の話になっていた時だった。
    「○○なんて、いいところに住んでたんですね~」
    「いや、大したトコじゃないですよ。田舎だし」
    「ええ~?都会じゃないですか~」
    「中途半端にね。あんまり面白いところじゃないです」
    横で聞いていた関口さんが俺を叱り付けた。
    場が一瞬凍った。
    「大塚~!関口さんがもっと訛っていいってよ!(笑)」
    先輩、ナイスフォローです。
    また和気藹々とした雰囲気に戻ったが、関口さんは恥ずかしそうに俯いていた。
    2軒目はどうするかということになった。
    俺は関口さんのさっきの態度が気にかかり、先輩に誘ってもいいかと尋ねた。
    先輩は意外そうな顔をしていたが、もうひとりのOLさんを連れてさっさと行ってしまった。
    「もう少し、飲みません?」
    「ええ」
    関口さんを伴い、落ち着いて話せそうな店に入った。
    1軒目よりも静かな会話だったが、お互い打ち解けた感じになった。
    関口さんも「こうして落ち着いて話せるほうが好きです」と言っていた。
    まったりとした時間を楽しみつつ、俺は気になっていたことを口にした。
    「さっき、俺叱られちゃいましたね、関口さんに(笑)なんか悪いコト、言っちゃったかなぁ?」
    彼女が目を丸くした。
    「ごめんなさい!あんな大声出すつもりなかったんですけど…なんか…」
    「なんか?」
    「故郷の話をしてた時の大塚さん、辛そうな顔してた気がして…」
    黙って話を聞いた。
    「私はずっと東京で生まれ育ったから故郷がある人の感覚はよくわからないんですけど、
     普通、故郷の悪口を言う人って、それが冗談だったり、口ぶりに愛着が感じられたりして、
     本心で言ってるようには感じられないんです。でもさっきの大塚さんはとても辛そうに見えました」

    真剣に話す関口さんが恵子ちゃんとダブって見えた。
    お互いのメアドを交換し、関口さんと別れた。
    なんだか無性に恵子ちゃんと話したくなった。


    652 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:40:18.79 ID:dw10+mQ9O
    携帯のアドレス帳を開いたが、やっぱりやめた。
    俺の気持ちが通じたのか。数日後、携帯に恵子ちゃんから電話が入った。
    その日はタイミング悪く夜勤中で、着信に気づいたのは翌日だった。
    電話しようかしまいか夜まで迷った挙句、メールを送った。

    「久しぶり~!元気だった?昨日はごめんよー。夜勤中だったから」


    返信はすぐに来た。

    「ごめんね、突然電話して。夜勤だったんだ。ごめんなさい」


    また送る。

    「どしたん?何かあったのかい?」


    また返信が来る。
    チャットのようなメールのやりとり。

    「うん。最近落ち込んでて…ちょっと健吾君の声が聞きたかっただけ」


    こんなに弱い感じの恵子ちゃんは初めてだ。

    思い切って電話した。
    メールほど暗い声音ではなかったけれど、恵子ちゃんが無理して明るく振舞っている感じがした。
    「悩みがあるなら話してみなよ。大したことは言えないだろうけど」
    「ありがとう。あのね…」
    よっぽど我慢していたのだろう。
    どっと恵子ちゃんの言葉が溢れ出た。

    ずっと仕事のことで悩んでいたこと。
    精神状態が影響したのか、三半規管をおかしくして耳の病気になったこと。
    仕事を続けられなくなり、とうとう会社を辞めてしまったこと。
    お母さんが更年期障害で倒れたこと。
    次の仕事も決まらず、またお母さんのことも考え、マンションを引き払って実家に戻ったこと。
    そんな状態だから、次の書展に出す作品も煮詰まってしまっていること。
    気丈に話していたが、言葉は泣いているように感じた。

    俺は通り一遍の慰めしか言えなかったが、彼女は何度もありがとうと言ってくれた。
    声が震えていた。
    「健吾君と飲みに行ってた頃が恋しいよ。あれって、私にとって大事な時間だった」
    深い意味は無い。
    彼女は気弱になってるだけ。

    落ち着きを取り戻した彼女がおやすみと言った。


    653 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:41:18.57 ID:dw10+mQ9O
    翌日、俺は開き直った。
    恵子ちゃんと、このままで行けないだろうか。
    もう恵子ちゃんを無理に忘れなきゃいけない理由は何もない。
    俺と彼女の道が交差することは絶対に無いし、そんなことは出来ないけど、
    せめて平行に歩いていくことは許されないか。
    それは辛さを伴うし、いつかこの先、もっと大きな辛い結末を迎えるかもしれないけど、
    その時まで、ほんのちょっとでも幸せな気分を味わいたい。
    俺の気持ちさえ誰にも悟られなければ、なんの問題もないはずだ。
    ナルシシズムな考えに、俺の気持ちは軽くなった。
    それからは頻繁に電話とメールのやりとりをした。
    決して気持ちを気取られぬよう、細心の注意を払いながら、真面目な話、馬鹿な話、楽しい話をした。
    恵子ちゃんも明るさを取り戻してきた。


    12月。
    いつものように送られてきた恵子ちゃんのメールは沈んでいた。
    秋に仕上げた書の作品が落選したという。
    彼女の書道歴は年季が入っており、階位で言えば「師範」の腕前を持っていた。
    それだけに周囲から受けるプレッシャーも相当なものだったろう。
    加えてあの頃の彼女のプライベートはボロボロだったし。
    無鑑査で出展はされるが、見に行く気力がないと言っていた。
    拠り所とするものが上手くいかない。
    きっとそれはものすごく辛いことなんだろうな。
    すぐさま慰めたくて俺は携帯を手にとったが、口にできる言葉なんて高が知れている。
    俺はメールを送ることにした。

    「ひとつの作品を生み出したというコト、それを多くの人が見にくるというコト、
     それが恵子ちゃんへのご褒美だと思う。だから、おめでとう」


    返事はすぐ来た。

    「ありがとう。
     まだまだ私は未熟だけれど、でも何かを表現したくて、それをいろんな人に見てもらいたくて、
     だから、それを形に出来て、そういう場を持てているということは、有難くて、幸せなことなんだよね。
     目が覚めました。とっても素敵な言葉を、ありがとう」



    おかげで展覧会に行く気になれたと彼女は言った。
    上野の美術館で来年2月。
    ぜひ一緒に観てほしいという彼女に、俺は「もちろん!」と約束した。
    今年もひとりの年末だったが、心は少しあったかかった。


    654 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:42:12.07 ID:dw10+mQ9O
    2004年。
    年が明け、俺は2月を心待ちにした。
    遠足を待つ小学生の気分。
    仕事はますます不規則になり大変だったが、張り合いがあるから苦にもならない。
    現金なものだ。
    そして当日がきた。
    上野駅に降り立つとすでに恵子ちゃんはいた。
    なんか痩せたな。
    ちゃんと食べてんのか?
    「恵子ちゃんもお母さんも、身体は大丈夫?」
    ふたりとも快方に向かっているとのことだった。
    しかも彼女は地元で職に就き、順調な生活を送っていると。

    ほっとした。
    一年半ぶりに会う恵子ちゃんの笑顔は変わってなかった。
    彼女の案内で美術館へ。
    「初めて見せるね、私の作品。これが賞を逃した傑作です(笑)」
    彼女の指の先に、懐かしい字があった。
    今回の作品は俵 万智の歌だった。
    朝市はにんげんの市。食べる買う歩く語らう手にふれてみる。
    この歌は俵のバリ旅行記の歌だそうだ。
    昔、恵子ちゃんもバリを旅行したそうで、
    その時感じたバリという国が持つ生命力が、あのとき無性に懐かしくなったという。
    きっと彼女は自分の作品に癒されようとしたんだろう。
    あんな精神状態の中でこんな力強い文字が書けるなんて。
    しかもそれを書いたのは、今俺の横にいる小さな女性なのだ。
    「この人です!この人がコレ書いたんですよぉ!」
    俺は叫び出したくなった。
    その後、2時間以上もかけて会場を観て回った俺たちは、
    彼女の「ベタな観光地に連れてって(笑)」という要望を叶えるべく、
    汐留の有名な店でランチをとり、お台場の某TV局を巡った。
    「なんだか垢抜けたね、健吾君。いろいろあったんだろうね」
    TV局の「球」から夕暮れの海を眺めていたら、恵子ちゃんがまじまじと俺の顔を見て言った。
    ドキンとしたが、「もともと持ってた俺の都会的な一面が、ハマで開花したんだよん(笑)」とかわした。
    恵子ちゃんはツッコミもせず、ただ微笑んでいた。


    655 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:43:19.47 ID:dw10+mQ9O
    帰りの新幹線の時間を気にしなくてもいいように、俺たちは東京駅で晩飯を食べることにした。
    酒も食もすすんだ。
    ふと、恵子ちゃんが言った。
    「あのね。私、今付き合ってる人いるの」
    鼻の奥がツーンとした。
    その彼は友人から紹介された人だと言う。
    年は30代後半。大人の人だ。

    「おお!おめでとさーん!」
    やめろ馬鹿。
    「どんな人?照れんなよぉ!教えろって(笑)」
    口が止まらない。
    「ん。やさしい人。私が大変な時も助けてくれた」
    「いいじゃん、いいじゃん!…で、結婚とか考えてるの?」
    「まだわかんない。そういう話はまだしてない」
    「しちゃえばいいじゃん!恵子ちゃんに気持ちはあるんだろ?」
    「うん…でも考えること、いろいろあって」
    「なにを考えるってのさ?こういうのってタイミング大事だぞぉ(笑)」
    お前はそのタイミングをいつも逃してるだろ…。

    恵子ちゃんが真顔になった。
    「なんか…結婚させたがってない?」
    「そ、そりゃ従姉が幸せになるってのは嬉しいことだもの!」
    「ありがと」と言う恵子ちゃんとは目が合わせられなかった。

    改札口まで恵子ちゃんを送った。
    早く帰したいような、引き止めたいような。
    改札の向こうに行ってしまった恵子ちゃんは、何度も振り返って手を振った。
    姿が見えなくなるまで俺も手を振った。
    また、“大好きな”悶々とした時間が訪れた。
    開き直ってわずか3、4ヶ月。
    これが結末か…早いなちょっと。
    もう少し時間があると思っていた。

    一ヶ月後、結婚式の招待状が届いた。
    送り主の名は…田中…。
    きた!!!!!!!…ん、いや、違う。恵子ちゃんのお父さんの名じゃない。
    それは田中一族の別の従兄さんからの招待状だった。
    脱力して安心し、安心したことに憮然となった。
    (もう覚悟決めろよ、俺)
    しかし覚悟を決める材料は、いつまで経っても恵子ちゃんから届かなかった。


    656 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:44:25.23 ID:dw10+mQ9O
    6月。従兄さんの結婚式に出席するため俺は帰郷した。
    2月以来、一切連絡を取り合っていなかった恵子ちゃんと顔を合わせる。
    いたって普通。元気そうだ。
    変に意識していたのは俺だけだった。
    きっと彼氏とうまくいってるんだろうな。
    チクリとした。
    またも席は同じテーブルだった。
    しかも今回は隣。
    まぁ、意識する必要はないんだけど。
    披露宴もたけなわを迎えた頃、恵子ちゃんが俺の肩を叩いた。
    「終わったらすぐ帰るの?」
    「いや。この後親戚だけで軽く飲むんでしょ?顔出してくつもりだよ」
    「そう。だったら後で時間くれる?話があるの」

    きた。今度こそきた。はぁ。
    「んん~?彼氏のことかい?(笑)」
    おどけた俺の言葉は、なぜか無視された。
    「???」

    田中の家に移ってからは、時間がやたら長く感じた。
    酒の味もよくわからない。
    やだなぁ。ああ、いやだ。
    このまま恵子ちゃんのスキを見て、逃げちゃおっかな。
    本気で考えた。
    帰りの新幹線の時間が迫ってきた。
    恵子ちゃんは台所に行ってる。
    チャンスだ。
    俺は中腰になって「そろそろお暇しますね」と親戚一同に挨拶した。
    従兄のひとりが「駅まで送るよ」と言った時、背後から声がした。
    「私、送るよ。飲んでないし」…恵子ちゃん。
    つかまってしまった。

    みんなの手厚い見送りを受け、恵子ちゃんの車に乗り込んだ。
    走り出すと恵子ちゃんが言った。
    「話があるって言ったじゃない」
    「ご、ごめんごめん。酔ってて…」
    彼女は怒ってた。
    ちょっと怖い。
    駅前のロータリーに車が止められた。
    俺は覚悟を決めた。
    でもまた口が動いた。
    「とうとう彼氏と結婚する気になったん?」
    「黙って聞いて」
    ぴしゃりと遮られた。

    「あのね」
    「健吾君のことが、好きなの、ね。付き合ってほしいな、って」


    657 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:45:30.96 ID:dw10+mQ9O
    今までで一番色気のない告白だったが、俺を一番動揺させた告白だった。
    もう1コ、脳が欲しかった。
    とてもじゃないが混乱しすぎて整理できない。
    また病気が再発したんじゃないかと思えるほど鼓動もひどい。
    ようやく、半開きになった口から言葉を出した。
    「かかか、彼氏は?彼氏のことは?」
    「別れたの」
    恵子ちゃんはずっとそっぽを向いたまま、こちらを見ようとしない。
    「別れたって…どうして!?」
    恵子ちゃんが上ずった声を上げた。
    「理由なんかない!」
    「健吾君が、好きなんだもん」

    もうこの場に居るのが耐えられなかった。
    「ごめん。考えさせて」
    俺は逃げた。
    最後まで恵子ちゃんはこちらを見なかった。

    いつもなら爆睡する新幹線。
    でも今日は寝れるわけがない。
    うれしかった。正直に。
    本当に好きで好きでたまらない相手から告白された。
    初めての経験。
    恵子ちゃんの顔が浮かぶ。
    思考が短絡化する。
    もう何も考えないで、恵子ちゃんの気持ちに応えてしまおうか。
    「俺も好きです」と、ぶちまけてしまおうか。
    きっと最高の日々が始まる。
    笑顔の俺の顔が頭に浮かんだ。
    …いけね。また口、開いてら。
    乾いた口の中を舐めた時、親父の顔も浮かんできた。
    我に返ると横浜に着いていた。
    あんなに考え事をしていたのに乗り換えミスも乗り過ごしもしていない。
    習性ってすごいなと、くだらないことを考えて気を紛らわそうとした。
    引き出物を床に広げ、もらった折り詰めに箸をつける。
    普段食べてるコンビニ弁当よりも格段に豪華な食事。
    なのに食がすすまない。
    恨むよ、恵子ちゃん。
    せめて夕食後に告白してくれれば。
    いや、だからといってどうというわけじゃないんだけど。
    愚にもつかないことを考えながら、食べ残した折り詰めを冷蔵庫にしまう。
    ダメだ。今日は何も考えられない。
    車の中での風景がリピートされる。
    「考えさせて」
    馬鹿な台詞を吐いたもんだ。
    考える余地なんて、そもそもないだろ?
    もうずっと昔から、答えなんて決まってただろうに。もう寝よう。夢を見よう。いい夢たのむ。


    658 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:48:08.96 ID:dw10+mQ9O
    0時頃、メールの着信音で目を覚ました。
    恵子ちゃんからだった。
    立て続けに3通。

    俺はメールを開かずにまた目を閉じた。
    ………。
    着信ランプが瞼越しにチラつく。

    わかった。わかったよ。
    見りゃいいんだろ。
    薄目でメールを開いた。

    「こんな夜中にごめんなさい。無事、お家に帰れたでしょうか。
     さっきは聞いてくれてありがとう。
     でも恥ずかしくて伝えられなかったことがあって…メールしました。
     私は、健吾君と話をしたり、一緒にいると楽しいの、ね。
     健吾君の話は、色んなところに話が広がっていったり、色んなことが出てきたりして、
     頭の中いっぱい引出しがあるんだなぁって、すごいなぁって、いつも思ってた。
     気楽でお馬鹿な話題が多かったけど(ごめんね)、健吾君がする真面目な話も好きだった。
     その中で、健吾君の言葉で前向きになれたり、
     「あ、そうか」って気付かされたりしたことがいっぱいあったの。それも、とっても素直に。
     落選した時にもらったメールでは、とっても素敵な言葉の使い方をする人なんだなって思ったし、
     忘れかけてたことを思い出させてもらいました」

    「それと健吾君って、最初に会った頃から変わったような気がするのね。良い意味で。
     (どこが?って言われると上手に説明できないけど)その、変わっていけるというか、
     変われる力を持っているというか、そういうのがとてもすごいなぁと、かっこいいなぁと、思ったの。
     そして他にもいろいろ…。だから、好きになりました」

    「好きって気持ちに気付いたのは、東京で会った時。
     今まで色々あったから、無意識に気付かないようにしてた気がする。
     でも気付いてしまったから、色々考えたけど、伝えようって決めました。
     従姉弟だから、だからこそ言いました。
     言わないでこの気持ちのまま見ていくほうが、嫌だなって思ったの。
     上手く伝えられているかわからないけど、
     どんなでもいいから、健吾君の気持ちを教えてほしいな、です。

     長くなってしまってごめんね。おやすみなさい」




    659 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:49:10.86 ID:dw10+mQ9O
    翌日は夜勤だったから、出勤時間まで時間があり過ぎた。
    起きて洗濯に取り掛かった。
    チンした折り詰めを無理矢理、腹に入れた。
    未開封のDVDを観た。

    それでも時間はなくならない。
    早く職場に行きたかった。
    仕事が始まれば、考えることは仕事のことだけになる。
    出勤前に少し寝ておこうとベッドに入った。

    …寝れない。
    何度も寝返りを打つ。
    …ダメだ。
    寝酒を飲んだ。
    具合悪くなった。
    結局一睡も出来ずに時間は経った。
    必死に歯磨きして酒の臭いを消し、会社に行った。
    こういう時に限って仕事は暇。
    逃げても無駄。
    眺めていた天井がそう言った気がした。

    考えよう。
    みんなが笑顔でいられる方法を。

    シミュレーションが始まった。
     1.恵子ちゃんと付き合う。
    ↓2.円満に交際が進み、お互い結婚の意志をもつ。
    ↓3.彼女を親父に会わせる前に、親父と母のこれまでの経緯を話し、母(太田家)と親戚関係にあることを親父に言わないよう口止めする。
    ↓4.結婚。
    披露宴はガーデンパーティ。

    ………アホか。
    4の前には「両家顔合わせ」があるじゃないか。
    その時に恵子ちゃん側の誰かが口を滑らしたらバレるだろ。

    なら、
     4.田中、太田の両家の人間全てに口止めする。
    ↓5.結…………

    無理だそんなの。
    大体、結婚式なんてことになったら親父か母、どちらかは参列できなくなる。
    親父は妹の結婚式の時、参列を辞退した。
    母に「花嫁の親」としての権利を譲ったのだ。
    結果、妹はバージンロードをお父さんと歩いた。
    この上、息子の晴れ姿まで見せられないなんて。
    いや、俺が誰と結婚しようが、ふたりが揃って参列することはないんだろうけど。
    ええい、もう。
    それに口止めが成功したって。一生、恵子ちゃんにウソをつかせるのか?
    田中や太田の人たちに、ワケのわからない約束をずっと守ってもらうのか?
    そして親父を、一生だまくらかすのか?みんなが笑顔でいられる方法?そんなのありゃしない。
    二ヶ月後、俺は恵子ちゃんにメールを送った。


    660 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 01:50:57.99 ID:dw10+mQ9O

    「こんばんは。元気に過ごしてますか?まずはお返事が遅くなってしまったことをお詫びします。
     そして、ごめんなさい。俺は恵子ちゃんとお付き合い出来ません。
     あれから色々と考え込んでいました。
     正直な話、俺も恵子ちゃんと会っていると楽しいです。
     俺の一方的な感覚かもしれませんが、恵子ちゃんとはウマが合うと感じています。
     打てば響く会話、同調し合える価値観、何より恵子ちゃんの誠実さにはいつも感嘆していました。
     (いつも馬鹿なことばっかり言って、その気持ちは表に出ていなかったかもしれませんが)
     ですから、これまでの恵子ちゃんとの関係を恋愛に発展させるのは、
     俺にとって非常に良いことだと思えます。
     しかし俺は、恵子ちゃんを恋愛対象として見ていません。
     女性として見ていないわけではないのです。
     ただ今まであまりにも近いところで接していたから、親友としての気持ちしか持てないのです。
     残酷な言い方になって、本当にごめんなさい。どうかお身体をお大事に」



    送信ボタンを押した時、吐き気がした。
    二ヶ月も待たせた挙句、なんて返事だ。
    こんなに残酷な言い方をする必要があったのだろうか?
    だけど親父のことは出せない。
    恵子ちゃんに「じゃあ、そのことがなかったら…」なんて思わせるわけにはいかないのだ。
    これでいい。
    こんな男を美化させる必要はない。
    恵子ちゃんとの付き合いはこれで終わってしまうだろう。
    それに耐えられるように、俺は強くならねば。


    661 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 02:00:36.78 ID:dw10+mQ9O
    一週間後、恵子ちゃんからメールがきた。

    「メールありがとう。正直、お返事は諦めていました。
     結果は残念ではあったけど、でも、健吾君が二ヶ月考えてくれたこと、
     そしてちゃんとお返事をくれたことに、今は感謝しています。本当にありがとう。
     気持ちを伝えることが出来て良かった。言わないときっと私は後悔してた。
     まだちゃんと気持ちの整理がついたとはいえないけど、でも、好きになれたことは、うれしかったよ。

     最後にお願いがひとつ。
     これからも健吾君とは今までどおりのお付き合いがしたいです。
     それだけでいいから。次に会う時は、従姉として普通に会えるようにするから」



    複雑な気持ちだった。
    嫌われなかったことに「ほっとした」、なんてことはない。
    むしろ避けられるほどに嫌われたかった。
    物理的な距離は遠いのだから、会おうと算段しなければ、会わないで済む。
    一年に一回会うか会わぬかの関係なら、忘れられる日もきっと早く来る。
    だが、彼女の言う「今までどおりの付き合い」
    それはこれからも一緒に書展に行ったり、一緒に食事したり、そんなことを意味するのだろう。

    こちらこそ。これからもよろしく!
    返信したメールとは裏腹に、これからはもっと意識的に彼女を避けなければ、と思った。

    彼女を傷つけないように。
    彼女に悟られないように。
    “意識した無意識”で。


    663 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 02:01:38.67 ID:dw10+mQ9O
    秋の始め、俺はとりそびれていた夏休みを利用し帰省した。
    折り良く、他県に住んでる妹一家や、妹たちと同じ県で住み働いている義弟も遅めの夏休みで里帰りしていた。
    みんなが揃うのは久しぶりだった。
    帰省最終日、みんなで食事に出た。
    お父さんの行きつけの店だった。

    姪っ子たちにいじられながら、合間合間で酒食を楽しむ。
    忙しないが落ち着く。
    東京では得られない安らぎ。

    と、義妹が厨房から男性を連れてきた。
    「健吾君は初めて会うよね。今、付き合ってる人です」
    聞けばその人とは結婚を前提に同棲も始めており、お父さんも公認の男性だった。
    「はじめまして。これからよろしくお願いします、お兄さん」
    俺よりも年上なのに深々と頭を下げる彼。
    こそばゆかったが、ふたりの幸せそうな顔に俺の顔も綻んだ。

    すると義弟が口を開いた。
    「俺も結婚します」
    彼も同棲している彼女がいた。
    会ったことはまだなかったが話だけは聞いていた。
    しかも、「子供、できちゃって(笑)」とまで言った。

    あらら。お兄ちゃん、ちょっとショックよ。
    数年前には結婚一番手だったのに、いつのまにやらドンケツだ。
    いや、相手もいないんだからスタートラインにすら立ててないじゃないの。
    笑顔で動揺してた俺の心中を見透かしたかのように、母が言った。
    「とうとう、アンタひとりだね(笑)」

    ズッシーン。
    それを言っちゃあ、おしめぇだよ母ちゃん。
    「アレでしょ?おにぃ、結婚する気ないでしょ?」と妹。
    「なぜ?」
    「なんか、独身で遊んでるのが楽しいって感じ」
    「だね。アンタ今、結構充実してるでしょ?」

    …お前ら何年、俺の母親と妹やってんだよ。
    身内に遊び人と思われてるとは。
    その後、みんなが俺の結婚観を代弁してくれた。
    ひとっつも当たってなかったが。


    664 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 02:02:43.17 ID:dw10+mQ9O
    東京に戻った俺は仕事に打ち込んだ。
    というか、打ち込むしかなかった。
    張り合いはなかったがヤル気は出した。
    ある日、先輩(合コンに誘ってくれた人)に飲みに誘われた。
    「お前に会わせたい人がいるんだ」
    生ビールで乾杯した後、意味深な目つきで先輩が言った。
    「誰です?女のコでも紹介してくれるんですか?(笑)」
    「んふふ」
    いたずらっ子のような目で先輩は笑った。

    一時間ほど経った時、先輩の「会わせたい人」が来た。
    関口さん、だった。
    関口さんとは合コンの後、2~3ヶ月ほど一緒に飲みに行った。
    先輩と一緒だったり、ふたりだけで行ったこともあった。
    しかしいつしかお互いに連絡もしなくなり、ここずっと疎遠になっていた。
    先輩の隣に座った彼女が、眉を落として挨拶した。
    頬が赤い。
    「お久しぶりです」
    「ほんと、久しぶりだね~」
    「あのな」
    先輩が俺のジョッキに自分のジョッキをぶつけながら言った。
    「俺ら、結婚するんだ」
    はぁ、そうですか。
    おいおい。
    会社でも俺ひとりかい。
    会社での独身男性もとうとう俺だけとなった。
    帰りの電車の中、吊革にもたれながら外の暗闇をじっと見る。
    無性にこみ上げてくる孤独感。
    酔ってるから尚更。
    (まぁ、焦っても仕方ないのはわかってるけどさぁ)
    (でも焦らないと、お前、次のコト考えないんじゃないの?)
    (そうは言っても、こんな不規則な生活じゃ出会いも無いし)
    (仕事のせいにすんなよ。気の持ちようだろ)

    頭の中で一人で会話しながら、乗り換えのために地下鉄ホームへ。
    (出会いなんて、その辺にころがってんじゃないの?)
    ちょっとだけ、カッコつけてホームに立ってみた。


    665 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 02:06:24.68 ID:dw10+mQ9O
    11月。夜勤明け。
    携帯の留守電をチェックしたら親父からメッセージが入っていた。
    母さんのことで話がある。連絡をくれ
    大抵は忙しさに託けて電話を返さない俺だったが、
    この時のメッセージはなんだか親父が普通じゃない気がした。
    しかも親父の口から母のことが出るなんて。

    夜、親父に電話した。
    「あのな。お前には言ってなかったんだが」
    前置きした親父が語った話はひどく俺を動揺させた。
    「母さんな、俺名義のキャッシュカード持ってるんだ」
    「母さん、ブラックリストに引っかかっててな。離婚後、母さんに頼まれて、信用金庫のやつ作ったんだ」
    「目的は?理由は?」
    「亜矢(妹の名だ)の私立高校の学費で生活が苦しいって」
    「苦しい?待てよ、あの時は俺も母ちゃんも働いてたから、亜矢の学費だってなんとかなってたはずだぞ?
     借金は親父が背負ってくれてたし…」

    「俺もそう思った。だけど私立は部活の寄付金だのなんやかんやで金がかかるって言われたんだ。
     それに、借金を背負う代わりに、亜矢の養育費はいらないって言われてたから、
     せめてカードぐらいはと思って、な。
     返済は母さんが責任持ってやるって言ってたし、現に返済が遅れて俺に督促の連絡が来ることもなかった。
     それにその後、亜矢は私立の短大にも入ったろ。
     だから、亜矢が短大を卒業したらカードも解約するって約束で、そのまま持たせてたんだ」

    釈然としない。
    嫌な予感もする。
    「…それで?」
    「ところがな、カードが解約されてなかったんだ」
    「この間、俺のアパートに督促状が来てな。
     二ヶ月分たまってた。俺も『まだ解約しないで使い続けてたのか!』って思ったら頭がカーッとなってな。
     でも母さんに連絡してアチラの家に迷惑かけるわけにもいかんから、直接、信用金庫に電話したんだ。
     別れた女房が使ってるって言っちまってな」
    「それで…親父もブラックリストに入ってしまったのか?」
    「いや、きちんと払って解約してくれればそこまでの処置はしないって、信用金庫の担当者が約束してくれた。
     それで…悪いがお前に頼みがあるんだ。
     母さんや信用金庫と連絡とって、後の処理をしてくれないか?
     俺は母さんに連絡なんてしたくないし、出来ないし、それに今、仕事で名古屋に来てるんだよ。
     抜けられん仕事だから、信用金庫に出向くことが出来ないんだ」


    666 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 02:07:22.36 ID:dw10+mQ9O
    仕方ないか、としか思えなかった。
    夜勤明けで疲れていたせいもあると思う。
    「わかった。やっとく」
    「本当にすまん。昔からお前に頼ってばかりで…」

    そこで電話が終わればよかった。
    「大体、アイツは、」
    親父が母に対する愚痴を言い始めた。
    離婚から今に至るまで、親父が母のことを悪く言うことはなかった。
    初めて聞く、親父の心情。
    溜め込んでいたのだ。

    だが俺にそれを聞いてあげられる余裕なんてなかった。
    「やめてくれよ!俺は親父と母ちゃんの息子だぞ!?そんなこと、聞かせることじゃないだろ!?」
    荒々しく携帯の電源を切り、ぶん投げた。

    翌日、信用金庫に連絡をとった。
    既に親父が俺を代理人とする旨を連絡していたため話は早かった。
    解約には俺の身分証と、俺と親父が血縁であることの証明書があれば問題ないとのことだった。

    夕方、役所に戸籍抄本をとりに行き、そのまま仕事に向かった。
    職場に着くと、仕事を始める前に母に電話した。
    夕飯の準備をしていたという母に、すぐ本題を切り出した。
    「どういうことだよ?」
    努めて口調は抑えた。
    「ちょっと待って」
    母は慌てた声を出した。
    別室に移ったようだった。
    「お父さんから聞いたの?あれはちょっと振込みを忘れただけ。大丈夫」
    「…そういう問題じゃない!!」
    「別れた旦那のカードを、再婚してからも使ってる神経がわからないって、言ってんだよ!!!!」
    「………」
    「俺もだいぶ貸したよな?あんまり返してもらえてないけど。
     お父さんが家にあんまり金を入れてくれないから、なんて言ってたけど本当にそうか?
     そこにお父さん、いるんだろ?俺、お父さんに聞いてもいいか?」
    もちろん、そんなことはするつもりは無い。
    「それは…やめて。お願い」
    母の振り絞った声が、いつも思っていた疑問の答えになった。

    「…つまり…そういうことなんだな。お父さんが原因じゃなく、自分で勝手に作った借金なんだろ?」
    「…うん」
    「あんた、病気だよ」

    母は黙っていた。
    信用金庫に返す金を準備するよう母に言い、電話を切った。
    その日の仕事はやたら長く感じた。


    667 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 02:09:19.29 ID:dw10+mQ9O
    翌朝、職場を出てすぐに信用金庫に電話した。
    これから訪ねる旨を伝え、次に母に待ち合わせの時間をメールする。
    その足で新幹線に乗り、今までで一番、気乗りしない帰郷をした。
    駅の改札口にいた母が目にとまった。
    その姿にますますムカムカした。
    母が何か言いかけたが、俺は黙って母の手から金の入った封筒をひったくった。

    信用金庫では責任者らしき年配の男性が俺の応対にあたった。
    つつがなく手続きが済んだ後、男性が言った。
    「大変ですね。お察しします」
    仕事上の言葉だったと思うが、少しありがたかった。

    また12月がきた。
    いつもなら、年末年始に帰郷するのか母から連絡が来るところだが、今年はない。
    当然か、と思っていたら、恵子ちゃんからメールがきた。

    「今年は帰ってくるの?久しぶりに健吾君と会ってお酒でも飲みたいな」


    避けようと決めてからは俺からメールを送ることはなかった。
    恵子ちゃんから来ても、当たり障りのない言葉で2、3行のメールを返すだけ。
    この時も、仕事が忙しくて帰れないな~、風邪ひかないようにね、とだけ返した。
    実際、恵子ちゃんのことを抜きにしても、今年は帰りたくない。
    わざとスケジュールに仕事を入れ、職場のTVで除夜の鐘を聞いた。

    2005年。1月の中頃のことだった。
    母と恵子ちゃんからほとんど同時にメールがきた。
    母の内容はこうだった。

    「お元気ですか?去年はひどい思いをさせて、本当にごめんなさい。とても反省しています。
     まだ怒っていることでしょう。当然です。だけど、それを承知の上でお願いがあるのです。
     2月に英治君(義弟の名)が彼女を連れて帰ってきます。
     彼女の家族とウチの家族の顔合わせをするのです。
     当人たちは結婚式をしないつもりだそうで、だからこの顔合わせはとても大事なものです。
     みんな、貴方も同席してくれるのを望んでいます。
     どうか一時だけでもいいので、私への怒りを我慢してもらえませんか?
     勝手なことを言ってごめんなさい」



    気持ちは大分落ち着いていたが、まだ母への怒りが消えたとは言い難かった。
    もちろん英治君たちは祝ってあげたい。
    でも…母の顔を見たらきっと俺は…。


    668 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 02:11:07.56 ID:dw10+mQ9O
    悩んでいたら恵子ちゃんからメールが。

    「元気?2月にまた上野で書展があります。
     今回は入賞しました!もちろん今年も行く予定。一緒に行ける?
     またこのおのぼりさんを東京見物に連れてってほしいな」


    入賞したのか。よかったなぁ。
    うれしくて仕方ないだろうな、恵子ちゃん。
    一緒に祝ってあげたいなぁ。
    でも。
    すぐに返事のメールを送った。

    「ごめん。その日は仕事なんだよね。
     忙しい時期だから抜けられないんだ。
     入賞おめでとう。君はやればできる子だと思ってたぞ(笑)」


    仕事は暇だった。
    スケジュールのやりくりはいくらでも出来た。

    恵子ちゃんからもすぐに返事が来た。

    「そっか~残念。私は健吾君の感想が一番好き。
     偉い先生とか書をやっている人とかから色んな感想や意見をもらうけど、
     書をやっていない健吾君からもらえる感想はとっても素直で、ストレートに私に入ってくるの。
     私の作品が書をやっていない人の心に残って、
     書って良いね~って思ってもらえてる、そんな気持ちになれるの。
     だから本当に残念。お仕事がんばってね。無理して身体壊さないようにね!」



    10分後に2通目が来た。

    「話は変わりますが、工藤直子って憶えてる?
     健吾君は観てないけど、健吾君が転勤するちょっと前の書展で私が作品の題材にした
     「花」という詩を書いた人。その人の本で私のお気に入りのがあるのね。
     それ、ぜひ健吾君に読んでほしいので送るね。プレゼント。
     本当は会って直接渡したかったけど。気に入ってもらえるといいな」



    「花」本当は俺、あの作品観たんだよ、恵子ちゃん。
    あれを観て、俺は母との喧嘩別れを思い直し、家族を二度と切り捨てないって、誓ったんだ。
    恥ずかしくて、そんなこと君には話してないけど。
    恵子ちゃんの字が頭に蘇ってきた。
    どんなことがあっても家族は家族なのだ。
    俺は母に「出席する」とメールをした。


    669 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 02:12:01.03 ID:dw10+mQ9O
    ホテルで食事をしながら、両家の顔合わせが執り行われた。
    こちらは亜矢の家族も同席し、ちょっとした大人数だったが、
    彼女側もおじいちゃんやおばあちゃん、兄姉の家族などが揃い、大変な賑わいとなった。
    (こうして、家族ってのは増えていくんだな)
    みんなに酌をしながら、そう思った。

    会もお開きになり、お父さんが俺を駅まで車で送ってくれた。
    母も同乗していた。
    駅で一旦、俺と母を下ろし、お父さんは車を駐車場に置きに行った。
    母が口を開いた。
    「今日は本当にありがとう。ごめんね」
    今日は会ってからあまり会話をしてなかった。
    足元を見ながら話す母に、俺も言った。
    「ひとつだけ、本当のことを話してよ」
    「うん」
    「もう、借金は無いんだね?大丈夫なんだね?」
    「うん。大丈夫」
    「その言葉、信じるからね?」
    「うん。本当にごめんなさい」
    「ならいいよ。忘れようぜい(笑)」

    本心から笑えたわけではなかったが、それでも少しは軽くなった。
    母は相変わらず下を見ながら、また「ごめんね」と言った。

    数日後、恵子ちゃんから荷物が届いた。
    中にはチョコと本が入っていた。
    本来の意味として受け取りたかったチョコを頬張りながら、本を読み始めた。

    工藤 直子
    「ともだちは海のにおい」

    それはイルカとクジラの友情物語だった。
    どこかほのぼのとさせる挿絵と、飾らない文章がとてもいい。
    (確かに恵子ちゃんが好みそうだ)
    読んでいたら恵子ちゃんの顔が浮かんできた。
    読み進めたら、ますますその顔が増えた。

    だめだ。
    1/3も読まないうちに、本を閉じた。
    そしてそれ以来、一度もこの本を開いたことはない。


    670 名前:ローカルルール変更議論中@VIP+ 投稿日:2009/06/21(日) 02:13:43.55 ID:dw10+mQ9O
    2,3日後、ホワイトデーの意味で俺も本を贈った。
    大森 裕子というイラストレーターの書いた絵本。
    「よこしまくん」と「よこしまくんとピンクちゃん」という2冊。
    見栄っ張りで、ヘソ曲がりで、ぶっきら棒で、
    格好つけなフェレットが主人公で、ピンクちゃんというガールフレンドがいる。
    大人が読んで思わず「くすっ」となる絵本だ。

    「ともだちは~」ほど深いものはないが、俺はとても気に入っていた。
    恵子ちゃんからのお礼のメールは喜んでいた。

    「本、ありがとー!よこしまくん、すごくいい!
     かわいくて、ほんわかしてて。『けっ』とか『ふんっ』とか言ってるひねくれモノなんだけど、
     素直じゃないな~コイツ♪って感じで、どこか憎めない。
     こんな人、いるよねぇ…あ、いたいた!横浜にひとり(笑)
     ピンクちゃんとのコンビもいいね!
     なんだかんだピンクちゃんに言っても、ちゃーんとピンクちゃんのこと大事に思ってて、
     ピンクちゃんも、よこしまくんのことすごいなーって思ってて。
     なんか微笑ましい。ホントにありがとう!大事にします」



    ああ…そういや俺、似てるかもな。
    よこしまくんほど、ハッピーじゃないけど。


    【3】へつづく

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