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http://kingfung.blog.fc2.com/blog-entry-3532.htmlウォトカの瓶
461 名前: スターリングラード戦の思い出話 [sage] 投稿日: 2009/04/19(日) 00:45:38 ID:???
…当事攻防戦に参加し生き残った元兵士たちを探し出し、
市内最大の激戦地で今は戦争記念公園となっているママイの丘で語らってもらった。
戦死者を悼む永遠の火を絶やさぬ記念墓地や、高さ80メートルの「母なる祖国の像」がある。
この丘で戦死した7200名の名を刻んだ壁があり、その壁面に沿って歩いてもらった。
歩いているうちに、壁面に馴染みの名前を見つける。
「ああ、あいつはここで死んでいたのか」と始めて知り、
もう老境に入った元兵士たちが泣き崩れる場面もあった。
そのうち、思い出話に花が咲いた。カメラは回り続けるが、もうカメラの存在など忘れている。
「そういえば、毎晩暖房代わりにウォトカが50グラムずつ配給されたなあ。アレだけが楽しみだった。」
「そうそう。もったいなくてチビリチビリなめるように飲むヤツもいれば、グイッと一気に流し込むヤツも
いたっけ」
「一人一人の性格がモロに出たなあ。覚えているかい、セリョージャって若くて元気のいい青年」
「うんうん、まだ口ひげがうっすらと産毛のように生えてきたばかりだというのに、
イッパシの男ぶって生意気なところがあった可愛いヤツ」
「ウォトカを50グラムずつ飲むなんてケチなことをするやつは、ロシアの男じゃない、とか抜かしやがって
500グラム瓶に毎晩50グラムずつ流し込んだもんだ。瓶が満杯になったら一気に飲むんだ、と言ってね。」
「そうだったなあ。毎晩ウォトカのレベルが上がっていくのが楽しみで楽しみで仕方がないっていう風だっ
たなあ」
このあたりから、ゴツくてモサモサした老兵士たちの声はやたら湿っぽくなり、鼻をすすりだした。
カメラは回り続ける。
「瓶がちょうど満杯になるその晩、ヤツは帰ってこな……」
米原万理著 「ロシアは今日も荒れ模様」より
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